m:私が独立したいと考えた一番のきっかけは結婚で、ライフスタイルが変わってもずっと今の仕事を続けたい、そしてお客さんともっと近い距離で関わりたいと強く思ったからです。きむちんも家庭をもつことによって開発面での心境の変化はありましたか?
k:そりゃもう、アヒルやクラゲのスポンジがまさにそうだね。産まれたとたんに作っちゃったから(笑)
m:お客さんからは、子供が産まれたことで使う洗剤を見直したというお声をよくいただきます。守るべきものがあると選ぶものも慎重になりますよね。
k:当たり前だけど、安全だという確信がなければまず自分の赤ちゃんに使わないよね。皮膚が薄いから吸収されやすいんじゃないかとか、体内に入っても安全かどうかかなり慎重になる。自分が作って安全だってわかっているから子供に使える。
m:お料理と一緒ですね。自分で素材から選んで手づくりしたものは安心できる。
k:そうだね。自分が作ったから安心できて当たり前だけど、お客さんもがんこ本舗の洗剤を安心して使ってくれているのは本当に嬉しい。
m:つい先日も、あるお客さんから「いい商品を作ってくれてありがとう」と感謝されました。その一言の為だけにわざわざお電話を掛けてきてくださるんです。しかも何度も。私が作ったわけではないのですが、そういっていただける瞬間が今の仕事をしていて一番嬉しいです。
k:いかに自然体で、自分の言葉で発信していくかが重要だよね。俺さ、井戸端会議力があるみたいで、そこで人間関係が出来て「ねぇねぇきむちんて、メーカーでモノつくってるんだよね?どういうものなの?」から始まって「じゃあ使ってみたら〜?」みたいな軽いノリで、おせっかいかっていうぐらいに裏技とかもどんどん教えちゃう。
m:だって「きむちん」ですからね。社長っていうことを時々忘れます(笑)
k:自分でも忘れてます。普通は洗剤屋さんは洗剤しか売らないけど、畑やったり音楽やったり、自分にとってはすべて一緒。その垣根がとれていくといいなって思うよ。それこそ5歳未満で亡くなっていく子供に何が出来るかってところで、俺は洗剤作ります、じゃああなたは?みたいなね。どこまで変えられるかわからないけど過ちは犯したくない。
m:そういう意味でも「海へ…」を世界中に広めたいですね。
k:水も違えば食生活が違うから、その国の生活スタイルに合わせた洗剤を各国に作れたらいいよね。
m:型にはまらないっていう意味ではxきむちんもそうですよね。
(※xきむちん:がんこ本舗の代表と研究職を兼ねる木村”きむちん”正宏がNippon有数の作家やメーカーとコラボレーションし、その仕事やモノの真髄を『買える実用の暮らし道具』に仕立てあげてゆくシリーズ。)
k:みんな型にはめたがる。なぜそうするかというと「脳」的に整理がつきやすいからだろうね。
m:柔軟性のある見方をすることによって新しい商品を生む可能性も広がりますよね。あとはいかに素直にお客様との距離を近くするか。
k:素直に生きていると人が「いいね」って言ってくれる。騙したり騙されるより、やっぱり人は信用したいし自分も信用されたい。とにかく自分がいいなと思ったことをやり続けたい。
Happy法則
m:がんこ本舗のスローガンとして、関わった人がみんなHappyになれるという「Happy 法則」がありますが、それはきむちんの心に常にありますか?
k:それは常に大事にしている。というより人をHappyにできないことをするのが大嫌い。人を幸せにしたいという事が俺にとっての「エゴ」だと思う。Happy法則はそのエゴから発展させていけるものなんじゃないかな。まずエゴがないとね。自我を忘れちゃいけない。そこからどうしたら自分だけじゃなくて他の人もHappy になれるかなという考え方をする。ビーチマネーはまさにそうだね。
(ビーチマネー:浜辺に打ち上げられる曇りガラスのような風合いを持つガラス片のことで、湘南ではこれを地域通貨として協賛店舗でおまけ感覚で使うことができます。生みの親はきむちん)
m:私も時々拾っています。もちろん目に入るのはきれいなビーチマネーだけではなくゴミもたくさん。
k:だから、ついでにゴミも拾ってね♪みたいな。2013年春には国交省を交えて筑後川の水質調査と生態系を調べて実際魚を食べるってイベントをやるんだ。上流・中流・下流の魚を同じ魚種別に食べ比べたりする。ちょっと過激だけどそれで美味しくない原因を子供達と一緒に考える。
m:そのイベント、おもしろそ〜。
k:ただ水が汚いって言っているだけじゃなくて原因を一緒に追究して解明する。そこに楽しさが加われば、これぞhappy法則!
m:子供達も楽しみながら生態系と環境問題を学べていい思い出になりますね。
k:飢餓の問題を回避するにもHappy法則しかないでしょう。
m:がんこ本舗の商品を使ってくれる人が増えれば増えるほど、使う人も環境もhappyになる。その継続がいつかそういった問題の解決の糸口に繋がる気がします。自分と子供が生きるこの先100年くらいのみの問題ではないですからね。それでは最後の質問です。きむちんの将来の夢を教えてください!
k:子供達に自分のやりたいことを引き継いでもらいたい。最終的には飢餓と貧困をなくす。全て戦争の原因だから。理性をもっているといわれる人間が、食物連鎖の頂点に立っていながらも精神的な面でも頂点に立っているか。昆虫や他の動物のほうがよほど理性的だったりするかもしれないよね。同じ種でこんなにも命を奪い合うってないじゃない。食べるために「いのち」をいただくのではなくて、領土を増やすため、民族や宗教が違うからいのちを奪い合う、あるいは資源やエネルギー欲しさだったりね。すべて自分が中心で自分が欲しいだけ。子供達には、お父さん一人じゃ出来ないからねって伝えている。
m:子供は地球を守る意識を人一倍純粋に持っていたりしますよね。それが例え遊びだったとしても、守る理由や守るために、今出来ることを教えられる親が増えたら素敵だなと思います。
k:なんだか真面目になりすぎちゃったけど、忘れちゃいけないのは「エコよりニコっ!」。子供たちには二枚目になる努力より、カッコいい生き方を選んで欲しい。でもおしゃれも大切!自分をデザインすることだから(笑) そしていつか子供に「おしゃれだね」って言われる大人になろう。「そうよ、このおしゃれは貧困と飢餓から世界をまもるためのものなのよ」なんてね、胸張って答えられる大人に!人生もおしゃれにデザインしなきゃ。
正しいことをやりたいなら、カッコよく生きなきゃね♬
インタビューを終えて
インタビューの始まりはなんときむちんの小学校の校歌斉唱からでした。校歌の歌詞もなかなかユニークで面白かったのですが、まさかそこから始まると思わず!しかしありがたいことに初めてのインタビューに緊張していた気持ちが一気にゆるんだ瞬間でもありました。
初めて山に登った時のこと、ショッキングな飢餓のニュースを目にした日のことをまるで昨日のことのように目を輝かせながら話してくれました。
ワクワクを求め続ける子供のように好奇心旺盛なきむちん。固定概念にとらわれず正しいと思うことであれば180度考えを転換する思い切りさもある。
「何でみんなは簡単に変われないの?新しいことを知るって嬉しいことでしかないよ」という言葉が印象的でした。
インタビューを続けていくうちに、あちこちにちりばめられていた『今のきむちん』を形成するパーツがだんだんと集まり、最後にはぴったりパズルが完成したような、そんな達成感がありました。 (松澤)